「WATCHES & WONDERS GENEVA 2026」vol.9 [更新日:2026年4月20日]

今年のグランドセイコーは、これまでとは少し違った印象を受ける打ち出しでした。
一言で言えば、“精度のブランド”としての軸を、より明確にしてきた年だと感じます。
その象徴が、「SLGB023」「SLGB025」に搭載された新キャリバーU.F.A.「Cal.9RB1」です。

SLGB023

SLGB025
スプリングドライブ自体はすでに完成度の高い機構ですが、今回のアップデートは単なる性能向上にとどまらない内容になっています。
まず特徴的なのが、精度の安定性に直結する緩急調整機能の進化。
これにより長期使用における個体差や経年変化への対応力が高められており、いわゆる“エージング”を前提とした精度維持の思想がより明確になっています。
さらにムーブメント全体では、低重心化と小型化が同時に図られている点も見逃せません。
重心を下げることで外乱に対する安定性を高めつつ、コンパクト化によってケース設計の自由度や装着時のバランスにも寄与しています。
こうした積み重ねによって、単に高精度を実現するだけでなく、長期間にわたってその精度を維持するための構造が作り込まれていることが伝わってきます。
スプリングドライブという機構の完成度をさらに引き上げながら、“使い続けることで価値が積み上がる精度”へと進化させている点は、今年のグランドセイコーを象徴するポイントと言えそうです。

キャリバー9RB2
この流れは、メカニカルモデルの「SBGH376」にも共通しています。

ハイビートという機構自体は以前からありますが、それを継続して強く打ち出している点に、ブランドの姿勢が表れています。
毎時36,000振動のハイビートムーブメントは、外乱の影響を受けにくく、安定した精度を維持しやすいという特性を持っています。さらに、秒針の滑らかな動きや、時間を刻む感覚そのものにも独特の魅力があります。
また、ダイヤル表現においてもグランドセイコーらしさがしっかりと表れており、精度を追求した機械式でありながら、視覚的な美しさとのバランスが非常に高いレベルで成立しています。
単に高振動というスペックに留まらず、“日常で安心して使える精度の機械式時計”として仕上げている点に、このモデルの価値があるように感じられました。
その考え方が最も分かりやすく表れているのが、「SBGX363」「SBGX365」といったクォーツモデルです。

一見すると非常にシンプルな3針ですが、精度や耐久性といった基本性能を徹底的に突き詰めている点は、グランドセイコーならではの魅力です。
さらに今年は、精度や信頼性はそのままに、ムーブメントの長径を約0.6mm小型化した「キャリバー9F51」が採用されており、ケース全体のバランスや装着感の向上にもつながっています。
クォーツであっても妥協しない、むしろクォーツだからこそ精度と完成度を追求するという姿勢が、より明確に感じられるポイントです。
ここまで見てくると、グランドセイコーの特徴はよりはっきりしてきます。
それは、「どの方式でも“精度”という一点に収束させている」という点です。
一般的には、「機械式か」「クォーツか」どちらかに軸足を置くブランドが多い中で、グランドセイコーは
●スプリングドライブ
●ハイビートメカニカル
●高精度クォーツ
この3つをすべて並列に扱い、それぞれで最適解を提示しています。
重要なのは、これらがバラバラに存在しているのではなく、すべて“精度をどう実現するか”という同じ問いに対する異なる回答になっていることです。

この構造があるからこそ、どのモデルを選んでもブランドとしての一貫性が崩れない。
ここは他ブランドにはあまり見られない、グランドセイコー特有の強みと言えます。
そして今年はもうひとつ、印象的だったポイントがあります。
それが大谷翔平選手の存在です。

グランドセイコーと大谷翔平選手
単なる広告的な起用というよりも、
■継続して結果を出し続けること
■高いパフォーマンスを維持すること
といった点が、グランドセイコーの価値観と重なって見えます。
技術としての“精度”と、人物としての“精度”。
その両方が自然につながっている印象でした。
こうして見ていくと、今年のグランドセイコーは「美しさ」に加えて「精度」をより前面に出してきたと捉えることができます。

もちろん従来の美意識はそのままに、そこに明確な軸が一本通ったような感覚です。
これまでは少し説明が必要だった部分も、今年の内容を見るとかなりシンプルに伝わります。
「なぜグランドセイコーなのか?」
その答えが、より分かりやすく整理されてきた印象です。
技術、デザイン、そしてストーリー。
それぞれが無理なくつながり、ひとつのブランドとして完成度を高めている。
今年の展示は、そんな現在地をしっかりと感じさせる内容でした。
世界市場の中での立ち位置も、着実に次の段階へと進んでいることが伝わってきます。
その流れを、改めて実感させられる展示でした。


























































